薄毛・抜け毛の治療方法【医師監修】 女性型脱毛症(FAGA)治療が保険適用にならない理由と費用の抑え方

FAGA治療を始めるにあたって、まず理解しておきたいポイントは保険適用を受けられないということです。しかし、負担にならない範囲に費用を抑えることは十分可能です。そのためにはFAGA治療についての正しい理解や知識が欠かせません。以下では、FAGAが保険適用にならない理由と費用の抑え方を解説いたします。
FAGA治療の保険適用
一口に保険といっても、国民健康保険や企業の健康保険などさまざまあります。しかし、FAGA治療はどの保険においても原則として保険適用範囲外とされています。
FAGA治療は保険が適用されない理由
日本の公的医療保険制度は経済的状況に関わりなく、誰もが病気やケガの治療を受けられることを目的としています。このような「保険診療」に対してFAGA治療は「美容」に分類され、「自由診療」として扱われます。つまり、FAGA治療の費用は保険の適用を受けられず、クリニックや医院側が設定した治療費を全額自己負担で支払うことになります。
保険治療が適用される場合
保険が適用されるかは、その症状を引き起こしている原因によって決まります。FAGAの場合は薄毛の原因は主に遺伝やホルモンの働きによりますが、疾患により薄毛が進行することもあります。例えば、ストレスや自己免疫が引き起こす円形脱毛症や甲状腺機能障害によって引き起こされる薄毛については病気の治療とみなされるため、原則として保険診療に含まれます。皮膚科を受診する場合、保険診療の範囲では頭皮のトラブル改善が主な治療であることを念頭においておきましょう。
FAGAの主な治療方法

FAGAの主な治療方法は、大きく分けて4つあります。以下、ご説明いたします。
1.メソセラピー
メソセラピーは、頭皮にミノキシジルや発毛促進因子を注射によって直接投与する方法です。投与する薬液はそれぞれの医院やクリニックに異なりますが、内服薬に比べて発毛を実感しやすいと言われています。また、注射といっても極細針を使用し、処置も数分程度で終了するため体への負担は大きくないと言えるでしょう。
2.薬物療法
薬物療法とは、内服薬を服用する方法です。薬物によって効果が異なりますが、一般的に長期にわたり治療を継続することが必要になります。代表的なものとしては、ミノキシジル、スピロノラクトン、パントガールなどがあります。
3.外用薬の塗布
ミノキシジル含有の外用薬を直接頭皮に塗布する治療法です。ミノキシジルはもともと血圧降下剤として開発されましたが、臨床実験中に発毛効果が認められたため、現在世界中で薄毛治療に用いられています。ミノキシジルには頭皮の血流改善効果が認められており、毛髪の成長を促進する作用があると言われていますが、薬物治療と同様、一定期間継続的に使用する必要があります。
4.自毛植毛
自己の頭皮から毛組織の一部を移植する方法です。頭皮ごと切り取って薄毛が気になる部分に移植するFUT法と、毛穴ごとに毛組織を移植するFUE法の2種類があります。拒絶反応が起きにくい、自然な仕上がりに期待が持てるといったメリットがある反面、一般的に費用が高額になる傾向が高いこと、また合併症などの一定のリスクがあることは否めません。
FAGA治療法別の費用相場
メソセラピー
メソセラピー1回あたりの費用は約15,000円~100,000円と言われています。この治療法は有効性があると言われていますが、複数回の施術が求められるため総額50万円を超えることも少なくありません。また、通常メソセラピーだけでなく、内服薬や外用薬が併用されますので、その費用も考慮に入れておきましょう。
薬物療法
費用相場は毎月7,000~10,000円でしょう。しかし、服用を中止することにより、再度FAGAが進行する恐れもあるため継続的な服用が必要です。薬物療法の年間の費用相場は80,000~120,000円と言われています。
外用薬
外用薬の相場は毎月10,000~15,000円程度でしょう。毎月の出費が高額になるわけではありませんが、薬物療法と同様長期にわたる治療が必要になることを考慮しておきましょう。
自毛植毛
FUT法とFUE法のどちらを選択するかによっても変わってきますが、後者の場合、費用は毛穴ごとに生えてきている3~4本ごとの毛髪(「1グラフト」と呼びます)で計算されます。相場は1グラフト1,000~2,000円程度と言われており、部分的な修正であれば、約400~600グラフト、全体的な修正なら約2,000~3,000グラフト必要とされていますので、仮に600グラフト移植すると600,000~1,200,000円になります。ほかのFAGA治療と比較してかなりの高額になることが予想されます。
ランニングコストがかかる場合もある
自毛植毛を除く治療法は一度で終了するものではありません。特に外用薬や内服薬は使用を中止すると再びFAGAが進行する恐れが高いため、発毛を実感した後もその状態を維持し続けるためのランニングコストがかかります。メソセラピーは1クール治療の後は効能が持続する期間が長めと言われていますが、やはりランニングコストがかかる可能性はあります。
FAGA治療でよくある質問
FAGA治療の費用を抑える方法について
自由診療であるFAGA治療は高額になりがちですが、逆にいえばクリニックや医院によって費用の設定がかなり異なるため、賢く選択すれば費用を抑えることができます。
クリニックによって費用が異なる理由のひとつは、広告費や人件費、また医院の立地条件などによります。
また、ジェネリック医薬品を扱っているクリニックもありますが、現状では男性向けのフィナステリドのみが該当します。このフィナステリドは女性に処方できない薬剤であるため、女性の場合はジェネリック医薬品で費用を抑えることはできません。
治療費と効能について
治療費が高ければ治療の効能が高いように感じますが、そうともいえません。薬の効能に関してはジェネリック医薬品が劣るわけではなく、個人の体質によっても大きく変わってきます。しかし、自毛植毛に関しては一般的に技術力によって治療費が高くなる傾向にあります。
治療費だけで決めるのではなく、自分にとって最適な治療法は何かを前もって医師に相談することが重要と言えるでしょう。
FAGAの治療期間について
自毛植毛は基本的に一度の施術で終了しますが、内服薬や外用薬の使用期間は数か月から数年必要になります。また、メソセラピーも内服薬や外用薬と併用することが多くなるため、長期の治療期間を想定しておくとよいでしょう。
AGAクリニックを選ぶポイント

AGAクリニックを選ぶポイント①
FAGA治療で心配なのは治療が長期化し、費用が高額になってしまうことです。そのためにクリニックとその都度コミュニケーションをとって相談できることが大切です。クリニックが一方的に治療を提案するだけでなく、きちんとこちらの意思や希望に耳を傾けてくれるかを見極めましょう。
AGAクリニックを選ぶポイント②
どの治療でもそうですが、医師の専門知識や技術力・治療実績は非常に重要です。多くのクリニックは無料カウンセリングを設けていますので、それを利用して実際に医師と面談し、その点を確認しておくとよいでしょう。
AGAクリニックを選ぶポイント③
クリニックの治療方針によって治療を提案され、想定より治療費が高額になってしまうことを避けるには、治療費の価格設定が明確で分かりやすいことが重要です。治療が長期に及ぶ場合でも前もってどのくらいの費用がかかるか予想できるため、安心です。
- Summaryまとめ
- FAGA治療は一般的に美容に分類されるため、保険適用外となります。しかし、内科や皮膚疾患から薄毛が起きている場合、その疾患自体は保険適用となり、薄毛も合わせて改善されるケースもあります。
また、自由診療は医院やクリニックが独自に費用を設定しているため、受診する医療機関によって金額が異なることを覚えておきましょう。
この記事の監修医師
AGAスキンクリニック レディース院 診療顧問田中洋平医師
- 【資格】
- 日本形成外科学会専門医
医学博士(信州大学)
- 【所属学会】
- 国際形成外科学会会員
日本美容外科学会会員
日本皮膚科学会会員
日本美容皮膚科学会会員
日本抗加齢学会会員
日本熱傷学会会員
日本救急医学会会員
日本フォトダーマトロジー学会理事
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